【募金活動】慈善団体によるクリエイティブな募金活動

by seino, 2016年5月16日

貧困や飢餓、難民の支援を実施している慈善団体。支援の協力をさまざまな人に呼び掛けるため、工夫した広告活動を実施しています。その中でも、とてもクリエイティブな募金活動4つをご紹介!

1.寄付した効果が“その場で見られる”ドネーション・プログラム

[国名:ドイツ/団体名:African Angel]
African Angel(アフリカの恵まれない子供たちを支援する団体)の事例は、「寄付の効果をその場で本人に見せる」ことをコンセプトにして設計されています。
同団体は“国際子どもの日” に街頭で寄付金を募るための一風変わったポスターを制作。このポスターにはアフリカで貧しい生活を余儀なくされ、無気力な様子で佇む子供の姿が描かれています。このポスターのユニークな仕掛けは、市民が硬貨でポスターの表面をこすると、徐々に表面の用紙が削れていき、削った用紙の下からは綺麗な教室の中で素敵な制服に身を包んだ笑顔の子供の姿が現れます。「あなたが今手に持ってポスターをこすっている硬貨を寄付してもらえると、”この子”の未来はこんな素敵なものになるんですよ!」とコミュニケートしています。
さらに、携帯電話のディスプレイに写った同様のイメージを指でスクラッチすることで、前述した『寄付することによる効果』があらわれるようになっていました。
この試みの結果、効率的に寄付金を集めることに成功しただけでなく、同団体のホームページへの訪問者数は70%も増加したそうです。興味津々でポスターをこすっている市民の様子がとても印象的です。

「自分の募金がどのように活用されて、どう変わるのか?」それが見える、想像できるだけでも、子どもたちのために支援してあげようという発起になりますね。

2.ホームレス支援団体 “QRコードを用いた寄付金集め”

[国名:イギリス/団体名:Simon on the Streets]
イギリスで活動する路上生活者の支援団体Simon on the Streetsによる寄付を募るためのプロモーション。
同団体は人通りの多い街中の様々な地点に、ホームレスの存在を連想させる、薄汚れた毛布やビニール袋、ペットボトルなどのアイテムとともにQRコードを明記したダンボールを設置しました。これらのアイテムが置かれた様子はあたかも“ホームレスが野宿しているように見える”ようになっています。
この仕掛けを街ゆく市民が見て、ダンボールに描かれたQRコードを携帯電話でスキャンすることで、寄付仲介サイト「JustGiving」の同団体専用ページにアクセスされ、そのまま『ホームレス支援』の活動に寄付ができるという仕様になっていました。市民がこのインスタレーションを街中で目にして、ホームレスに対して「少しでも援助したい、何とかしてあげたい」という問題意識をもったその瞬間に、携帯から寄付ができるというスキームが特長です。
人の気持ちが高ぶっている瞬間、問題意識をもった瞬間を上手く作り出し、捉えること。そして、まさにその時、その場所で、生活者に簡単に行動まで促す手法を提示することの2点が、移り気な市民に望む行動を取らせるための一つの解なのではないかと考えさせてくれるケースです。
ちなみに同団体がこのような募金活動を考案した背景として、クリスマスの時期にホームレスに直接お金を施そうとする市民がイギリスでは大勢いるそうですが、同時にホームレスに直接お金を手渡すことによりドラッグやお酒関連のトラブルの可能性を助長するという危惧を持つ人も少なからず存在したため、そういった不安感を払拭して。より効果的に寄付金を募る方法の一つになればと考えて実施に至ったようです。

「実際に困っている人たちに直接お金を渡せばいい」ということでは、問題は解決されず、さらに別の問題が発生してしまうこともあるようですね。それを知ってもらうためにも良い募金活動だと思いました。

3.地雷の惨状を“ケチャップ”で訴える

[国名:ニュージーランド/団体名:Campaign Against Landmines]
ニュージーランドを中心に活動する反地雷団体Campaign Against Landminesによる地雷被害者への寄付金を募るノベルティグッズ。
パッケージに“子供の脚”が描かれたケチャップパックで、切り取り線から開封することで、地雷の惨状を直観的に想起させる演出が施されています。そしてパッケージの裏面には「今もなお89もの国々で歩行中に地雷の被害にあっている人々がいます。寄付をお願いします」というメッセージが記載されていました。

誰もが使ったことのある商品ですが、見た目を変えるだけで衝撃的な訴求になっていますね。。個人的にはこれを使うことはできないですね。。

4.数々の広告賞を総なめにしたアルツハイマー病支援団体による秀逸な啓発広告

[国名:カナダ/団体名:Société Alzheimer Canada]
カナダで活動するアルツハイマー病患者の支援団体による、市民への啓発と寄付金を集めるために仕掛けたWeb広告。
ご存知の通りアルツハイマー病患者は、病気の進行とともに記憶が怪しくなり、少しずつ記憶自体が消えていくものですが、病気発症の初期段階においては、特に「短期記憶(“さっき食べたものが忘れる”などの少し前に体験した記憶)」が思い出せなくなる、という症状があらわれます。
当施策は、そんなアルツハイマー病患者特有の辛い“症状”をWeb上で疑似体験してもらうという企画。
カナダの大手ポータルサイトにバナー広告を出稿しますがこのサイトをユーザーが、色んな情報を得ようと下部にスクロールしていき、、、、、「やっぱりもう一度上のコンテンツを見よう」と思って、ユーザーが上部にスクロールしていくと、何と右サイドにあったバナー広告以外全てのコンテンツがまっさらになっているという仕掛けが施されています。
まさに『ほんの少し前に見た(体験した)情報が突然消えてしまう』という、アルツハイマー病患者の初期症状をWebサイトをスクロールするだけで、疑似体験できてしまうという企画。
この仕掛けの結果、広告のクリック率は通常のバナー広告に比べて400%も増加しました。こちらの施策は、数々の広告コンテストでも表彰されたそうです。
ポータルサイトを閲覧する人の何割かが、訪問時にとりあえず“上から下までどんな情報があるかをスクロールしてみる”という行動をとることを前提にして考案された施策のようですね。体験した人にはメッセージがズバっと伝わる、とても秀逸なインタラクティブ広告でした。

アルツハイマー病の特有のつらい症状をWEB上での疑似体験、とても面白いキャンペーンだと思いました!最初何が起こったかと戸惑うかと思いますが、アルツハイマー病で苦しんでいる人たちを知ることができる良いきっかけになると感じます!

上記に掲載したのはほんの一部。他にも興味関心を持ってらえるように工夫された募金活動が実施されています。
人によっては「苦しんでいる人たちをネタにして面白がってる、金儲けしている」なんて批判的な意見もあるかと思います。もちろん、その意見も1つあるかと思いますが、個人的には「全く世界の状況を知らない人たちに少しでも興味・関心を持ってもらうには、このような見せ方にしないと見向きさえしてもらえない」というのも実状だと思います。実際に多くの人に知ってもらうきっかけになった募金活動もあります。

批判的にとらえるのではなく、「何を伝えたいのか?」というのを感じとってみることで自分の考え方や見方が変わることもあるかもしれないですね。

出典:http://adgang.jp/2013/01/22353.html