今回は、冶金(やきん)学者のラリン・トーマス氏が、
これまでになかったステンレス鋼を作り出したお話です。
トーマス氏がこだわったのはステンレス鋼。クロム含有量を減らすことでその特性が改善されたのであれば、さらに減らすことができなかったのはなぜかとトーマス氏は考えます。ステンレス鋼のクロム含有量を減らす場合、クロムが適切な温度で溶解するように炭素含有量も減らす必要がありますが、炭素含有量の低下は同時に硬度の低下にもつながります。そこで、トーマス氏はシミュレーションによる物質の適切な配分を模索。後に硬度や耐食性に優れ、かつクロムを完全に排除した組み合わせを発見します。
適切な配分を予測立てたはいいものの、実際に製造するにあたっては大きな壁が立ちはだかりました。通常、製鉄会社は内部の技術者が研究したアイデアを採用しており、外部の技術者のアイデアが採用されることはありません。それでも、トーマス氏は「ナイフでワクワクさせてくれた」という製鉄会社のCrucible Industriesに声をかけ、アイデアのプレゼンテーションを行いました。
引用:ナイフ製造における当たり前を覆したナイフ界の革命児「MagnaCut」を冶金学者が作るまで – GIGAZINE
かんたんに言うと、一般的なステンレス鋼はさびにくいですが強度が低く、そのナイフは使ううちに切れ味が落ちていきやすいという特徴があるところ、素材の組み合わせを研究し、さびにくさと強度を両立させたステンレス鋼を作り出した……ということです。
その話題のステンレス鋼を使ったナイフ「MagnaCut」ですが、
腐食テストを行っている動画を見つけました。
CPMマグナカットナイフ VANAXナイフ 耐食性テスト CPM MagnaCut and VANAX Corrosion Test
比較対象は、MagnaCutと同じく耐食性・靱性に優れるVANAXを使ったナイフと、包丁の中では比較的さびにくい青紙です。
それらを塩水に漬けてさびの発生と切れ味を見ます。
動画ではVANAXにやや劣るようにも見えますが、高い耐食性があることがわかります。
MagnaCutのイノベーションにはラリン・トーマス氏の情熱が必要不可欠だったと言えると思います。